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田口 まき(第1回)「写真を撮り始めたキッカケや好きなアーティストの話」

写真を撮り始めたキッカケ

田辺:すみません今日は!

田口:いえ。

田辺:一応その、アートランダムというのを始めまして。。
アートのコレクションを一品持って来てもらって、いろいろアートの話しをするってことなんですけど。
まきちゃんとはもう10年くらいですかね。

田口:10年。。最初がいつだったかな~って感じですけど。

田辺:でも、あのスペースフォースのときもお互いを知らなかったけど同じ場所にいたわけで。 (SPACE FORCEは田辺がディレクターを務めた中目黒にあったギャラリー)

田口:あーそれを思うと軽く10年くらいかも。

田辺:あれ面白かったですよね。

田口:ふふふ。

田辺:そもそもさ、写真を撮るじゃないですか。 で、ご自身もアーティストでコマーシャルな写真も撮るし、アーティスティックな写真も撮ったりするんですか?

田口:うーん、なんか今は作家活動を凄くしているかっていうと、個展をやって作品を売ってっていう活動は今はやっていないです。

田辺:じゃあ、コマーシャルな仕事が多いってこと? で、そもそも、そういう前の事をあんまり聞いて来なかったんだけど、写真家を目指してたの?

田口:うん。

田辺:どういうキッカケで写真を撮り始めたの?

田口:写真を撮り始めたのはもっと高校生くらいの時です。もともとアートも好きだし、あと映画とか演劇。ファッションとか好きで、まあ、洋服も好きで、そんな中である雑誌で、90年代の終わりくらいなんですけど、たぶんちゃんと調べないと分かんないですけどパルコの広告とかを撮っていたエレインコンスタンティンっていうフォトグラファーがいて、その人の写真が凄く好きになって、そこから写真を、、家にあったEOS Kissで友達撮ってみたいな感じで。。

田辺:エリーン・コンスタンティン?

田口:エレインコンスタンティン、ファッションのフォトグラファーです。 ニック・ナイトのアシスタントからファッション撮影されてた方です。

田辺:あ~分かるかもしれないけど、調べてみようかな。女性?

田口:たぶん。

田辺:じゃあ、そういう憧れがあって友達とか撮って、それがどんどん進化して行ったというか。 で、アートへの興味っていうのは学生の頃からあったんですか?

田口:身近にもアーティストの子が多かったし。

好きなアーティスト

田口 まき Maki Taguchi

田辺:本当にまきちゃんはネットワークが凄く広くて、ご自身も写真を撮るけど、アーティストのコネクションを広げて企画をしたりしてるじゃないですか、シブカル祭とか。一緒にやった事もあるし、そういうなんていうかな、臭覚っていうか、自然と知り合いになっちゃうの?どこかそういう場所、展覧会に行って話しするとか?どういう風に広がって行くの?

田口:まわりの子の紹介とかから広がったり、自然に増えていきました。美術やファッションや建築とか、いろんなジャンルの学生の友達と遊ぶのが楽しかったです。

田辺:芸大とか美大系とか専門学校とか行ったの?

田口:写真の学校。

田辺:あ~写真の専門学校! じゃあ周りにアーティストが多かった訳だ。

田口:うんうん、お友達の友達とか、そういうのもあるし、自然にって感じでした。

田辺:結構若いアーティストの人も知ってるし、ファインアート的な人も知ってたりとか幅広いと思うんですけど、なんというかな、どういうアートがお好き?じゃあまず好きなアーティスト、若手でもファインアートの人でも誰でも良いんですけど、どういう人が好きですか?知られてる人でまず、じゃあ、有名な人?ウォホールみたいな人でも良いけど。

田口:ウォホールももちろん好き。

田辺:なんか、あんまり知られてないけど私は凄く好きな作家とかいるの?

田口:凄い知られてないけど、知られてるピピロッティ・リストとかあ。

田辺:ピピロッティ・リスト?

田口:ピピロッティ・リスト。
やっぱり今自分が仕事してる子たちも本人も凄くアイコニックだったり、ポップで、表現もその人の世界観を持ってるみたいな人は凄い好きです。 作家性とかコンセプトとかそういうのももちろん共感とかもあるけど、私コンセプトの面白さ=好き、ではないかな。コンセプチャルなものに興味がない訳じゃなくて、面白いなって気付きがあったり、社会的な事だったり歴史的な事だったりと受け取るメッセージで視野が広がったりする事もあるからそういう意味で面白いなって思うけど好きか嫌いかで言うと、世界観のあるものでポップなものが結構好き。

田辺:じゃあアーティストさん自身が独特の世界を持っていてそれがそのアーティスト自身にも、作品にも出ているみたいな人が結構好きってこと?女流の作家さんも結構知り合い多いし好きですよね?

田口:うん。

田辺:それはなんか敢えて女流作家を自分的には追ってるとか?別に自然にそうなっちゃうの?

田口:うんうんうん。

田辺:あとなんか以前その映画をやりたいとか言ってたよね、その~フィルム的なこと?ドキュメンタリーみたいな?

田口:あ~わははは

田辺:その時もアイデアが面白いなって思って、流しっぱなしで撮るみたいな。 沢山のアーティスティックな子を集めて撮るみたいな、そういうのってまきちゃんぽいなって凄く思うんだけど。 やっぱそういうのは好きなんだね。

田口:うんうんうんうん!

田辺:なるほど。 で、東京のアートの現状っていうか、まあ、よくご存知だと思うんですけど、いろんな視点から語れると思うんですけど、まあその、いわゆる小山登美夫ギャラリーとかああいうギャラリーはそれなりに頑張ってるけど、やっぱり世界基準的な、オークションもないし、とかっていうその非常に弱いじゃないですか。 で、一方その若手の子とかシブカル祭に出る子とかパルコ的な今まさにアーティストとして狼煙を上げてる若い子みたいのが活躍する場とか、そういうのって、どうですか、十分?パリとかも行ったりしてるじゃない、どうなの世界において日本って?まきちゃん的には。

田口:すごく面白いものを持ってると思います、でも、それが、カワイイカルチャーとかクールジャパンって言った瞬間に、そこには実態がない感じがします。クールジャパンっていう輪郭自体には意味はなくて、その中に一人の作家さんがいたり、1個の作品があったりするっていうだけなんじゃないかなって個人的には思います。良く言われているようなそういう東京の若者のカルチャーってイケテますよね?とかよくそういう事言われたりするんだけど、、個人的には全体感っていうよりも、その中で誰々っていう子が凄いとか、そこで起きてるこんな話しが面白いとかっていう、より具体的な事にもっとフォーカスして行ければ面白いなと思います。

田辺:例えばその、伊勢丹なんかの仕事でも手伝ってもらって一緒にやったけど、じゃあ具体的にどんなことをやって行ったら良いとかって感じてます?じゃあフィルムを作るとか、アーティストたちに発表のチャンスをあげるとか大事だと思うけど例えばそれを僕らみたいな企画する側が発信するような事をもっとやって行くべきとかって思う?

田口:うんうんうん、思いますね。さっきの話に戻るけど、ウォホールとかファクトリーとかも超昔から憧れあるし、あんななんかイケテル若い作家とかモデルとかが集まって超楽しそう!みたいな。

田辺:そうだよね。

田口:あたしもあんな時代にあそこにいたら絶対遊びに行きたいなー、まあ、東京だったら天井桟敷に行きたいとは思わないけど。。。

田辺:あはは。

田口:それはなんかイメージがポップじゃない感じだからかな~。ファクトリーとかは凄い憧れる。 話飛んじゃうけどウォホールとは逆で、例えばヨーゼフ・ボイスみたいなコンセプチャルな人の中でも凄く共感する考え方とかってあって、なんか、その、作品を作品化するだけで表現しない、例えばウォーホールだってそうだと思うし、フレームに入った作品だけを作品としなかったからああいう風な事だったと思うし。 自分がやるべき事としてピンと来たのはアートが好きだけれど1個のピースを自分が作家として作るというよりも、もちろんそれも素敵だし憧れもあるしそれはやらないって訳じゃないけど、それだけじゃない、もっと自由でポップな考え方が出来ればいいなーって思っています。

田辺:うんうん、なんか、もっとムーブメントを起こすとか?

田口:うん、自分で起こすというよりは、既にあるもにのフォーカスしたり、そこで何か自分がそこに何かを加えたり、何かをする事によってあり方が変わって行ったりっていう事も、アートマーケットというかアートビジネスみたいなことろからは離れてしまうのかもしれないけど、そこに同じような面白さとか発見は作れるかなあと思っていて。

田辺:やっぱり、その、価値観に違う光をあてるっていうか、そういうパワーがアートってあるじゃないですか。

田口:うんうんうん。

田辺:だから例えば絵をコレクションするっていうのも、ある意味そのアーティストの価値観の現れである作品っていうのに共感したらそれを部屋に飾ったりとか見に行くとかっていう事で自分が刺激を受ける。 だからそういう刺激的なのが好きなんだねきっと。

田口:うん、そうですね。 あと、単純に被写体とかも若い世代の子とかを今は凄く追っかけていて、自分が何を感じるかとか、見た事もない事とか凄くそういう新鮮なもの?ピュアなものみたいのに個人的には惹かれる。もちろん洗練されていて美しいいものとかは素晴らしいと思うけど、なんでこんなものがどこから出て来たんだ?みたいなものに自分は凄く惹かれて。。

田辺:なるほどね。

田口:仕事的にも、だから写真をやって行くカメラマンとしてはそういう子達を撮りたいし。 で、自分が関わる仕事も「なんだこの人なに考えてるんだ?」みたいな、こんな自分が知らない事が始まってる世代の子達がいるんだなっていうとこに自分は刺激をもらう。

田辺:なるほどね。

田口 まき(第2回)「今注目するアーティストやネットという新しいアーティストとの出会いの場。」はこちら!

 

PHARMAKON’90

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1990年に幕張メッセでPHARMAKON’90という大規模な現代アートの展覧会があった。これはその時のカタログだ。こんな贅沢な展覧会はきっとバブルの時代だったから実現可能だったんじゃないかと思いながら久々にページをめくり中身を見てみる。1990年といえばもう24年前のこと、カタログを見ながらこんな作家の作品があったのか、などと改めて驚く。正直なところこの展覧会を見に行った記憶はかなり曖昧だ。きっと凄いアートばかりずらっと並んでいたので逆にどれに決定的な衝撃を受ける事もなく脳が軽い麻痺状態にでもなっていたのかもしれない。今となっては印象としてはこの展覧会を見た気がしないのだが現にこうしてカタログがあるしなんとなく幕張に見に行ったような気がするのみだ。出展品だが、沢山の作家の作品があるので全ては紹介出来ないものの、いわゆるポップアートの巨匠達、アンディー・ウォーホル、ジェームズ・ローゼンクエスト、ジャスパー・ジョーンズ、ロイ・リキテンシュタイン、ロバート・ラウシェンバーグエドワード・ルシュカなどの作品が全て揃っている。60年代から70年代、80年代を経てアメリカのニューヨークがアートの中心地になった時代だ。そして、80年代に頭角を現した作家達も沢山出展している。ジュリアン・シュナーベル、ロス・ブレックナー、リチァード・セラ、キース・ヘリング、ジャン・ミッシェル・バスキア、ケニー・シャーフ、ドナルド・バチュラー、フランチェスコ・クレメンテ、ジェフ・クーンズなどなど。ヨーロッパ勢ではマーティン・キッペンバーガーやシグマー・ポルケ、サンドロ・キーア、エンゾ・クッキなどなど。日本の作家も草間彌生や大竹伸朗などが展示されていたようだ。今となっては全員が巨匠というレベルの作家ばかり。もうこんな規模の展覧会は実現しないのだろうな。

The Artist In His Studio by Alexander Liberman

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アーティスト達のスタジオにフォーカスした写真集「The Artist In His Studio」を書店で見た時に、すぐに購入したいと思った。その本には、印象派の父といわれるセザンヌのスタジオ(アトリエ)から始まり、マチス、ピカソ、シャガール、レジェ、ブランクーシ、ドゥビュッフェ、アルプ、ミロ、ブラック、ルオー、コルビジェまで、歴史に名を残したアーティスト達の姿とそのスタジオ風景の写真が紹介されている。それぞれのアーティストが独特のスタイルのインテリアでスタジオを装飾しているが、作家の世界観の現れであるスタジオの風景は作品とは違った意味でとても興味深いし、なんとなく、どんなところであれらの名作は生まれたのかというのを覗きたい好奇心が凄くくすぐられたのだった。セザンヌだけが本人の写真はなく、主が不在のスタジオ(アトリエ)風景といった感じだが、絵の真髄を究めようと努力したストイックな創作活動をしていたのだろうと想像させるようなスタジオだ。マチスのスタジオは彫刻やオブジェなどもあって、まるで彼の絵に出てくるような雰囲気だが、実際彼はよく自分のスタジオを絵に描いている。ピカソのスタジオは生涯を通してエネルギッシュに創作活動をした作家らしく、おびただしい数のカンバスやオブジェなどの作品で埋め尽くされている。そこに暮らし、毎日大量の作品制作をして家が作品でいっぱいになったらもっと大きなところに引っ越すというようなピカソの大胆な生き方が想像出来る。ブラックのスタジオは彼の絵のように少し暗い色調というか、どこか落ち着いた雰囲気。ブランクーシのスタジオはどちらかというと彫刻の制作工房のようで生活というよりももう作品だらけだ。アーティスト達の作品ももちろん感動的だったり素敵だったりするけれど、彼らがそれを生み出したスタジオも同じくらいに興味深くて素晴らしい。なによりも作家のセンスと好みみたいなものが垣間みられるからとても面白いのだった。

川島秀明展「come out」

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渋谷ヒカリエ8階にある小山登美夫ギャラリーにて、川島秀明の個展を見る。2003年の小山登美夫ギャラリーでの初個展以来、一貫して人物像を描いて来た 作家だ。なんでも彼は95年から2年間、比叡山延暦寺で修行をしたそうである。その経験が彼の絵になんらかの影響を与えているのは確かであるように思う。 人物のみを描き続ける悟りにも近い潔さのような気迫が絵から感じられる。彼はこれらのさまざまな女性の肖像を自画像と呼んで来たそうだが自己の内面にある 何かを象徴する姿をこうした女性の像に吹き込んで絵にしているのだろうか。たいていの場合、無地の背景に大きな目と丸い顔の少女が浮かび上がるように描か れる。妖艶な美しさとでもいうか、独特の雰囲気を放つそれらの肖像は一度見たら忘れない印象的な顔立ちだ。簡素に描かれているようでいて、近くで見ると絵の具を幾度も塗り重ねているのがよく分かるが、それだからこそこれらの絵はシンプルながら深みのある風合いになっているのだと思う。展覧会のタイトル「come out」とは「出る」という意味の他に「何かを告白する」というような意味合いもあるが、2008年以来となる小山登美夫ギャラリーでの展覧会なので、新たなデビューをするというような気持ちで臨んだのだそうだ。こんな強烈な印象の絵が部屋にあったらいつも誰かに見つめられているような不思議な気分になるのではないかなどと思いながら鑑賞した。

Making Links:25 years

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白石コンテンポラリーアートは日本のアートシーンを牽引して来たギャラリーの一つだ。上野にほど近い入谷にある白石コンテンポラリーアートのギャラリー、SCAI THE BATHHOUSEは古い銭湯を外観そのままに内装をギャラリーにしたユニークな建物である。そのSCAI THE BATHHOUSEにて白石コンテンポラリーアートの25年を記念した特別なグループ展「Making Links:25 years」が開催された。出展アーティストは横尾忠則、名和晃平、村上隆、宮島達男、森万里子、ジュリアン・オピー、アニシュ・カプアー、リー・ウーファンなどなどそうそうたる面々である。この顔ぶれを一堂に集められること自体に白石コンテンポラリーアートの歴史とパワーを垣間みれる。当然だが作品はいずれも良く知られた物ばかりで見応えも十分。しかし、この夜はエキシビションよりも25年を祝うために駆けつけたアート業界の面々が主役といった趣だった。まだまだ、日本のアート業界は欧米に比べて統一感がないと感じるが、ここに集まった方々の努力はこれからも続くのだろう。日本国内での更なるアートの普及活動や海外への進出などやらなくてはならない課題は沢山ある。だが、今宵ばかりは素晴らしいアート作品に囲まれて日々アートの為に戦う同士達とグラスを片手に楽しく語り合うといったリラックスした雰囲気がギャラリー内を包んでいた。これからも日本のアートを世界に発信すると同時に海外の素晴らしいアートを直接見たり買える機会を与えてくれる貴重なギャラリーの一つとして白石コンテンポラリーアートに大いに期待したい。

ignore your perspective 21「Study for Cynicalness」

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白金にある児玉画廊にてグループ展を見る。ignore your perspectiveと題されたグループ展は毎回面白いテーマでの作品発表を試みるが、今回のテーマは「Study for Cynicalness」。シニカルとは、皮肉な態度をとるさま。冷笑的。嘲笑( ちょうしょう)的などと辞書にある。それも踏まえて今回の5人の作家の作品を眺めてみた。貴志真生也、小林真太朗、中川トラヲ、森下明音、和田真由子の5名の参加作家はいずれも個性的な作家であり作品もまた個性的である。平面的なオブジェ、不思議な雰囲気の立体作品、絵画など、さまざまな種類の作品がギャラリー内にインスタレーションされていてとても面白かった。なんの変哲もない普通の素材を使ってアート作品を作っていたり、なにかの装置を連想させるような立体作品や自由で開放的な色使いで描かれた絵画など、どの作品も極めて実験的な感じがする。どうしてこのような作品を作ったのか、作らなければならなかったのか。そんな事も考えながら興味深く見させてもらった。グループ展で作家に共通の制作テーマを与えるというのは凄く良いアイデアだと思う。それぞれの作家の普段とはひと味違った作品に出会えるし、それぞれが同じテーマで違う形の主張をする作品を生み出すのも見ていて刺激的だ。また、そういったさまざまな作品が一つのギャラリー空間でお互いに影響し合いながら展示される様も鑑賞体験として貴重だと思った。今後もこのグループ展ignore your perspectiveが楽しみである。

ベンジャミン・バトラー展「Seleced Trees」

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ヒカリエにある小山登美夫ギャラリーにて開催されたベンジャミン・バトラーの展覧会を見に行った。彼はアメリカのカンザス州生まれ。カンザス州というとなにもない場所としてよく比喩の引き合いに出されるほどなにもない所だと聞く。アメリカの田舎を想起させる代表的な州の一つだ。同時にトルネード、いわゆる竜巻の多発地帯でもある。オズの魔法使いの主人公ドロシーも愛犬トトと共に竜巻に飲み込まれ不思議な国であるオズに辿り着く。そんな土地柄が作家の深層心理になにかの影響を与えているのか定かではないが彼の作品は自然をその題材にしている。シンプルに捉えられた風景画。余計な物を全て排除して風景の印象のみを限られた形と色で表現している。その後、モチーフは木の枝の観察に移行し、木々のパターンは単純化され、抽象化される。こういった視点で作品を突き詰めることで有名な作家にモンドリアンがいるがバトラーはそこまで単純に題材を抽象化することはなくあくまで具象的な観点から抽象を試みるといったような感じがする。木の枝は彼にインスピレーションを与え、そこから彼独自のパターンや色合いを生み出している。色使いのセンスはほのぼのとした印象で寒色を使った作品ですらどこか暖かい感じがする。シンプルだが見れば見るほど深い絵だが、単純にそぎ落とされた色と形のパターンだからこそ表現出来る深みのような味わいがある絵になっている。

in our skin 衣川明子展

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アラタニウラノギャラリーにて開催されている衣川明子さんの展覧会、「in our skin」を見に行った。見ているととても不思議な感覚に襲われる印象的な絵である。そのほとんどは人物や生物の顔だったり体だったりするが、ネンドで作られた小さなフィギュアや獣の毛皮?のようなオブジェも効果的に展示にしてある。顔に毛のは生えた獣や不思議な体つきの人物などが独特の乾いたブラシストロークで丹念に重ね塗りされ、その表面の色合いはなんとも説明しがたい深い奥行きのような感触を描き出す。キャンバスが感触を持った肌のように見えて来る。そして、しばらく見ているとピントがボケている何かを凝視しているような不安な感覚に陥り、不意にそこに描かれている物に吸い込まれそうになる。そんな不思議な力を持った絵だ。彼女がいったい何をヒントにこうした不思議な生き物達を不思議な技法で描き始めたのかは定かではないが、一貫したスタイルとして描き続けているという事はこれらのイメージは彼女の中に相当強烈にわき上がってくるのに違いない。観る人によっては好き嫌いが分かれるかもしれないが、いずれにせよ忘れがたい絵である事はとても重要な事実だと思う。