月別アーカイブ: 2014年6月

drawing now

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今から約10年ほど前、村上隆や奈良美智などの日本人アーティストが欧米のアート界に出現してしばらく経ったころにMOMAのキュレーションで出版されたdrawing nowというこの本では、当時注目されていたアーティスト達の作品をoneからeightまでのプロポジションと呼ばれるチャプターで紹介している。ドローイングやペインティングなどの作品群をその作品の背景に感じられる特性で分類して紹介するという編集の視点が実に興味深いので購入した。チャプターは科学、装飾、建築、幸福、知能、文化、サブカルチャー、ファッションの8項目。それらのチャプターではそれぞれ3人の作家の作品を紹介している。たとえば装飾ではローラオウエンス、サブカルチャーではバリーマッギーに奈良美智、村上隆、そしてファッションではエリザベスペイトン、ジョンカーリンなどが紹介されている。80年代のNYを中心に起こったペインティングブームの後、次のアート界の流れを受け継ぐ新進気鋭のアーティスト達の作品はどれも個性的であり今見てもどこか時代が後押ししているような気迫に満ちている。その後、現在に至るまでにこれらの作家は更に活躍して今もその多くがアート界をリードするような存在でいるのだが、今見るとこの本に納められている作品にはほのかに懐かしささえ感じる。アート界の新陳代謝は激しく、10年前などあっという間に昔のことのようになってしまう。しかし、20年30年前までを振り返った時、そのアーティストがアートの年表にきっちりと載るような本物の作家だったのか、あるいは時代が作り上げた幻だったのか分かる、そんな気がするのだ。流行だっただけなのか、確固としたアートの文脈で語られるような存在なのか、その歴史的な判断はその時代ではなく後世になってはっきりとするものなのだろう。

森田恭通(第2回)海外のアートの話

ヨーロッパのアートとギャラリー

田辺:あの~海外によく行かれるじゃないですか。
どうですか、海外でのアートの存在感というか。。。

森田:そうですね。。えーっと、圧倒的なスケールのものもあれば、気軽に街にギャラリーが普通にいっぱいあって。。日本よりやっぱり多いですよね。
で、パリもそうだけどロンドンがやっぱり面白いギャラリーが多くて、ギャラリーかどうかも分からないようなギャラリーもありますからね!

田辺:なるほどね~

森田:だから凄くそれが良いのと、あと王道ですけどサーチギャラリーはやっぱり無料で開放してるところが良いですね!
で、結構入れ替えもあるので必ず時間が取れたらサーチ行ったり、あとはサーペンターギャラリー!

田辺:はい、サーペンター!

森田:サーペンター、サーチは時間が取れたら見たいですよね。
やっぱりこうロンドンは特に凄い上流階級とパンクの世界の両極があるじゃないですか。

田辺:面白いですよね~

森田:そう、で、上流階級を、えーっと、なんでしょうね、風刺?する、例えばバンクシーみたいのがいたりとか。。。

田辺:はいはい、セックスピストルズじゃないですけどね。。

森田:で、そうかと思えば凄く緻密なアーティストとしてデミアン・ハーストみたいのもいたりして。。もう、マネージメントも全部出来てしまうみたいな。プロダクションも作っちゃう。で、物も作る。で、自分で企画もする。。。そういう人もいますね。

田辺:はいはい。

森田:だからそういう土壌がロンドンは凄くあるような気がします。

田辺:刺激的な。。。

森田:ベルリン行って面白かったですけどね。

田辺:面白かったですか?

森田:うん、ベルリンもやっぱりギャラリーも結構多くて、それこそ本当にギャラリーかどうか分からないのもいっぱいあったし、
あと、アーティストビザが気軽に取れる街みたいで。。。

田辺:あーそうみたいですね。

森田:だから街中にアートが色んなところにいっぱいあるような、普通に落書きもレベル高かったりするしね。。

田辺:あーなるほど!

森田:で、ベルリンは音楽もファッションもアートももの凄いパワー感じましたね。。。

田辺:なんか、日本のアーティストもベルリンに留学してる人多くて、本当にそのビザのことらしいです。

森田:そう、取り易いですね。だから、受け入れ態勢があるんですよ。
だからああいうところ行くと本当に良いなと思いますね。
アートが身近ですよね、あと写真もドイツは盛んなんで。。。
ニュートン美術館なんかもう感動しますよ!

田辺:あ、そうですか!?

森田:ヘルムト・ニュートン!感動!あの大判が見れるなんてもう最高の幸せですよね~

田辺:あーそうですか、凄いですね~

森田:家が再現されているんです。書斎が!

田辺:へぇ~

森田:それが凄くて、あ~こういう家に住んでたんだ~って。

田辺:どんな感じなんですか?

森田:なんかね、本当に無造作、なんか、デスクワークがあってARAKIさんの写真が置いてあったりとか、本当に私物が全部、彼が興味ある物が置いてあって、結構ポップなデザインでしたね。

田辺:へぇ~まあ、センス抜群ですからね~

森田:そうです、いや~でも本当に良かった~

田辺:もう亡くなって。。。

森田:亡くなってますね。。

田辺:そんなでもないのにもうミュージアム出来ちゃうんですね~

森田:あれ!僕も持ってるでかい奴。。。

田辺:でかい奴ね!!

森田:あれね~日本版はね、A4の紙がパラッと入っててなに書いてあるかなって思うと、えーっと、足に落とすと危険です!って!笑

田辺:ははは~

森田:ちゃんと持って見てくださいって!笑

田辺:ははは、そこまで~!

森田:でも、見るの本当気合いいりますもん。怪我しますよ!

田辺:そうですよね~

森田:よいしょって見ないとめくれないとか。。。
あれは本当。。。

田辺:あれはタッシェン?

森田:タッシェン、タッシェン!
タッシェンもドイツですね。

田辺:そうですね~

森田:だからドイツってそういう土壌がちゃんとあるんですよね。
あとは。。こないだ時間取れたんでロスはいろいろ回ったんですよ。

田辺:はいはい。

森田:そしたらもう昔そういうのなかったエリアもギャラリーとかどんどん増えて来てて。
で、そのエリアってあんまり良くないエリアだったのがだんだん良くなって来てて。。。

田辺:はぁ~なるほど!

森田:いや~すっごい増えてましたよ。

田辺:ニューヨークもね、NEW MUSEUMが出来て、ロウワーイーストにレストランとかギャラリーとか出来たりしてますよね。
そういうアートの拠点を中心に盛り上がるって海外ありますよね~

森田:だから、日本も大分盛り上がって来たんだろうけど、なんだろう、えーっとまだ、なんっていうんですかね、目指してる途中なんでしょうね。

田辺:なんかその、アート好きの若者とかはギャラリーとか行くんですけど、一般の人はなかなか。。。

森田:行かないですね。。。向こうはもう親子連れでね、もうちっちゃい頃からアートに触れてますからね。。。

田辺:そうですよね~

森田:そのお母さんとお父さんもやっぱり同じようにされて来てるから。。。やっぱり、その、親の影響って大きいじゃないですか。

田辺:そうですよね~なんかアートに対するリスペクトみたいのってヨーロッパは凄いですよね~

森田:凄いです!

田辺:日本だと絵描きとかっていうとなんか道楽者なんじゃないかみたいな。。笑
そういうね、イメージみたいのが。。

森田:だから海外のお客さんとか多いから会話する時にアートの話するともの凄い盛り上がりますよ!

田辺:そうでしょうね~

森田:話のキッカケとしてはアートはもう最高ですね。

田辺:なんか、この対談で前にヒロ杉山さんと話してて、ヒロさんも海外の展示会とか行くらしいんですけど、もうお年寄りから子供までいっぱい来てて、おじいちゃんとかが話しかけてきて、「君はなんでこの絵を描いたんだ」とか、そういうことを聞かれるんですって、買ってってくれたりもするんですって。

森田:なるほどね。

田辺:やっぱ海外って、人を家に呼んで新しい絵が飾ってあったら「これいつ買ったの?」って聞かれて、これはこういう作家でああでこうでって会話のキッカケになるじゃないですか。
で、その人の人となりが分かったりとか、そういう楽しみって日本でももっと皆が持ってくれても良いかなって。
人は呼ばないですかね?

森田:呼ばないですね~

田辺:なんか、10万円のバッグは買うけど10万円のアートは買わない。。。

森田:買わないですね~

田辺:それがもう少し浸透してくれると。。。

森田:なんかね、良いバッグとか良いジャケットとの出会いってあるじゃないですか。

田辺:はいはいはい

森田:もう、僕のために生まれて来たようなバッグってあるじゃないですか!笑

田辺:信じ込んじゃう!?

森田:うん、信じ込んじゃう!笑
それと一緒でアートも出会いやと思うんです。

田辺:あーそれはそうだ。

森田さんのコレクション

森田:マイアミバーゼル行った時なんかも何万点ってくらい見てるじゃないですか!

田辺:見てますね~

森田:でも、そんな中で結局1個買うか2個買うかじゃないですか。
それはやっぱり出会いなんでしょうね。

田辺:そうですね~きっと。
本当にマイアミは一言で言うとその出会いを求めてるって感じですよね、毎回。
毎回出会う同じ絵もありますしね~

森田:で、行くと、去年買ったギャラリーが待ち構えている!笑

田辺:そうですね~笑

森田:待ち構えてるんですよ!笑
今年はね~~みたいに!笑

田辺:手ぐすね引いて!笑

森田:手ぐすね引いて!笑

田辺:そうなんですよ~買うとね~ギャラリーからこの人は買う人って二重丸になる。

森田:ね~本当に!
今回これ買ったんですよ。

yasumichi-morita-collection

田辺:お~

森田:名前なのか芸名なのか分からない人なんです、この人は。

田辺:へぇ~この人、この作品に付いて最後にちょっと話したいんですけど、これももちろん僕も見てなんか「あ~森田さん好きそうだな~」って。笑

森田:ははは~笑

田辺:そしたら案の定買っちゃった!笑

森田:あははは~笑

田辺:これ、選べるんですか?

森田:選べるんですよ!いろいろあって。。

田辺:あ~!で、ドンペリとルブタンとシャネルと。
そうですよね、当然!

森田:これ家の奥さんに注入すると当分もの買わなくなる!笑

田辺:あーそういう役目もあるんですね!笑

森田:点滴ですからね!

田辺:そうですよね、ブランドの点滴っていうのがおかしいですよね~

森田:他にも色々あるんですよ、ロレックスもあったし、車のブランドもあった。
で、好きな奴3つ選んで。。。でもこれ、増やして行けるから面白いよね!
で、ゴールド使ってるし、ちゃんと。。

田辺:本当ですね~

森田:点滴。。でも、これはウィットに富んだ物が好きっていうのの究極で。。

田辺:ほんとうですよ~ブランドカルチャーを皮肉ってる!

森田:皮肉ってる。
そうそう、シャネルの関係者の方にこのシャネルの掛かってる奴見せたら爆笑してました、「いいね~!」って、爆笑してました。笑

田辺:まあでも、ケイト・モスじゃないですけれど、こういったアイコンにされるってことがね、凄い。

森田:そうですね~

田辺:ウォーホルのキャンベルじゃないですけど、アイコンになるべき物ってことですから。。。

森田:だから変なアートだとたぶん怒っちゃうけど。。

田辺:中途半端だとね~でも、ここまでやったら面白いですよね~

森田:ねえ~

田辺:いや~このオブジェは凄い!
そして選んだのがドンペリとルブタンとシャネルてところが。。。

森田:日々の生活に必ずあるもの!笑

今日は靴はルブタンだしジャケットシャネルだし、今日の夜はドンペリ飲むでしょうから!笑

田辺:ははは~毎日どっかで!笑
なるほど~もうこれは即買いでしたか?

森田:即買いでした!

田辺:結構したんですか?まあまあ?

森田:まあまあでしたね~

田辺:でも、これはもう値段じゃない。
それこそ先ほどのもう森田さんの為に生まれて来たような。。

森田:
そうですね~

田辺:いや~今日は楽しいお話と素敵なコレクションをどうもありがとうございました。

森田:ありがとうございました!!

「森田恭通(第1回)インテリアとアートの話」はこちら!

ignore your perspective 25 「JUST THE WAY IT IS」

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白金の児玉画廊にて恒例の企画展ignore your perspectiveが開催された。今回はignore your perspective 25 「JUST THE WAY IT IS」と題して5名の作家の作品を展示している。ギャラリーに入るとすぐに足下に石が雑然とあり、その石にはリンゴやトマトがめり込んだようになっている。更に進むとギャラリー内右手には岩や山のコラージュ写真が壁面いっぱいにあり、手前には岩と鮮やかな丸い色の組合わさった巨大なオブジェが置かれている。ギャラリー内には他にも立体作品や絵が趣向を凝らして展示されている。それぞれ異なった作家の作品は意図的に絶妙な位置関係で配置されている感じだ。個々の作品から受ける印象も楽しめると共に異なった作品同士の共存が生み出す関係性の緊張感も楽しめる。それにしても毎回のことだがこの企画展は実に挑戦的である。作家達にテーマを与えつつもその結果として生まれる異質な作品の連動性を一緒に展示することでギャラリー全体が発する気合いのような何かが感じられる。テーマとなっている「JUST THE WAY IT IS」には「結局その程度のもの」という醒めた視点があるが、作家達があるがままの作品をむき出しで見せる大胆さと勇気を感じられる企画展となっているように思う。

ジャオ・シュエビン展

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渋谷ヒカリエのTOMIO KOYAMA GALLERYにて中国人アーティスト、ジャオ・シュエビンの展覧会を見る。北京生まれで上海を拠点に制作活動を行っている作家は海外での生活も長くフランス語と中国語を話すと聞いた。今回の個展の絵はニューヨークのセントラルパークに嵐が襲ったその後の風景だという。荒れた林や枯れ葉など公園の敷地の風景を丹念に描いた作品は青がかったグレーなどの色調で描かれ、細密なディティールまで丁寧に描かれているがその模写力は圧巻といえる。なんでも同じ濃さの色の油彩を塗り重ねることによって色の強弱を出しているとか。1回だけ塗った部分は薄いグレーで、塗り重ねることにより色が濃く、深くなって絵柄を形成して行く描き方なのだそうでその考察的ともいえる表現方法は非常に興味深い。よく見ると無数の小さい丸で構成される絵もあったりして彼の制作への独自のアプローチや絵画を完成させるまでのプロセスの大切さを重んじているところには、ただの模写ではないもっとコンセプチュアルな制作意志のようなものを感じる。しかしながらどういった制作過程だとしても結果としての絵は美しく、遠くで見ると力強くて近寄ってみると非常に繊細という絶妙の出来映えになっている。大きなキャンバスの作品も良いが特に小さい作品では彼の卓越した模写力を堪能出来ると思う。色の濃淡で奥行きや深みを出すといえば水墨画が有名だが中国人という作家の背景がどこかで繋がっているのではないか。

小西真奈 「Reflection」

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小西真奈さんの展覧会を見た。直球の油絵という感じでそれが逆にとても新鮮だった。描くのは彼女の回りの風景と自分の子供などだ。特に色彩が美しく絵の構図は穏やかながらどこかはっとするような斬新さを秘めている。絵から受ける印象は正統な絵画の流れを受け継いでいるとでも表現したらいいのか、どこか古典的であるが同時にとても新しい。油絵の具の独特な描き方を完全に自分のものとし、その技を使って対象を丁寧に観察し、愛情を持って描いているのが画面から伝わってくるような絵である。ほとんどの風景には愛する息子さんが登場するが、作家である母親の我が子への愛情をいっぱいに込めて描いているからこんなに癒される絵になっているのだろうか。見ていてとても幸せな気持ちになる。油絵の歴史は古く今でも多くの作家が油絵の具で絵を描くが、近年はアクリルといったウォーターベースの扱い易い画材が広く使われるようになってきたのも事実である。そんな時にこういった美しい油絵の作品を見られるのは嬉しい。森や林、草花や木々、水の反射など、近くで見ると絶妙の筆使いと色の重ね方で豊富な表現力を駆使して描かれている。個展には収まり切れなかった小さい作品もギャラリーの裏手で見せていただいたが小さい作品もとても繊細で美しかった。ゆっくり、じっくり、まるで愛情を重ねるように丹念に描かれた作品はどれも素晴らしく、この作家を今後も見続けて行きたいと思った。