月別アーカイブ: 2014年9月

小西紀行 「人間の行動」

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白金のギャラリーコンプレックスにあるアラタニウラノギャラリーにて小西紀行の「人間の行動」展を見た。キャンバスに様々な人物が描かれているがその色や筆使いにイギリスの画家、フランシス・ベーコンの影響を感じた。ベーコンはピカソに次いで大好きな作家だがまさか彼の影響をこういった形で受けて独自の作品を描く事が出来る作家がいるとは大変驚いた。なぜならベーコンの作風は非常に個性的で容易く会得したりましてや真似の出来るような世界ではないと思っていたからだ。もちろん彼はベーコンのモノマネをしている訳ではない。ひょっとしたらベーコンを知らないかもしれない。まあ、絵を描く物だったらベーコンを知らない訳はないだろう。しかし、こういった形でベーコンをどこか彷彿とさせるがそれの真似とは明らかに違う自分の絵画を描いているというのが凄いと感じた。彼の場合は様々な対象を考察的に狂気的に描いたベーコンとは違い今回見る限りではモチーフは人物に限定されている。展覧会のタイトルにもあるようにそれは「人間の行動」というテーマで描かれた人物画のシリーズといえる。ベーコンと違う点はそういった限定的なテーマ性、また考察の方向性がベーコンとは違う方向と深みにある事、そして狂気の質も違うように思われる点だ。絵には自ずと作家の内面が現れるが、ベーコンの場合は「狂っている」と言ってしまうと簡単だがそれを絵画の上で冷ややかに狂気的に表した点にあってそれは誰にも真似出来ないだろう。ゴッホの狂気は彼にしか描けなかったのと同じである。そして、小西紀行の場合は少なくとも絵を見て感じたのは一見すると狂気的に描かれているようだが受ける印象にはどこか温かさがあるという点だ。しかし、乾いたキャンバスの上に最小限に乾いた状態の絵の具を筆でこすりつけるような感じで描く筆致やどこか考察的な筆運びなどディティールにはやはりベーコンを思わせるものがある。ただ、彼がもしもベーコンの影響を受けていたにしても注目すべきは彼がそれらを自分のモノとして独自の表現に完全に取り込んでしまっているところで、だから作品に偽物っぽさはまるでない。今後も彼の作品を注目して見て行きたいと思うのはどんな経緯であれこういった独創的な作風と表現方法を備えた作家がこの先にどのような作品を作って行くのか楽しみだからである。

野口強 コレクションを始めたキッカケなどの話

初めて買った写真

田辺:お忙しい中どうも!

野口:はい。

田辺:今回はmy art collectionっていうコーナーでして、コレクションの話から、まあ、色々と他の話もするというコーナーです。 まず、聞きたかったのは写真をコレクションし始めたキッカケ?

野口:もともとは、写真集。。

田辺:うんうん。

野口:で、ほら、アシスタントの頃って写真集買うのも高いじゃない。でもまあ、立ち読みとか、六本木遊びに行った帰りにブックセンター行ったりとか。。神保町行ったりとか。コツコツ写真集は買いながらも、でも、写真見てると、ちょっと、プリント見たいなあってなるじゃない。で、ギャラリー行ってみたりしたりして、で、ちょっと余裕が出来て、じゃあ本物。。。写真集が偽物って訳じゃないけど、プリントを買ってみたいなって思った。

田辺:なるほどね。 写真集は、ファッション?写真とか?

野口:いや、もうばらばら。

田辺:ばらばら、でも、写真が好き?

野口:そうだね。

田辺:写真集を買ってた頃に特に印象的なのは?

野口:最初の頃は、やっぱりちょっとファッション系が多かったのかな、なんか。 アヴェドンとか、それこそブルース・ウェーバーとかペンとか、それ系が多かったかな。

田辺:ブルース・ウェーバーのリオとか?

野口:うん。

田辺:あの頃のは凄いですよね。

野口:そう。で、リオの中でも「あ~この写真欲しいな」って思ったらブルース・ウェーバーが撮ってなかったりするんだよね。

田辺:え、本当に!

野口:そう!ドーベルマンがバーってジャンプしてる写真が欲しかったんだけど、ギャラリーの人に聞いたら、チコっていうブラジル人が撮ってた。

田辺:マジに!

野口:そう。

田辺:え、あれ全部ブルース・ウェーバーじゃないんだ!

野口:それが欲しいって言ったんだけど、どこにいるか分かんないって言われて。笑

田辺:凄いね!笑

野口:そう、ニューヨークのギャラリーでそう言われたの覚えてる。

田辺:それ、ニューヨークのなんていうギャラリー?

野口:あ~、なんだっけ。えーっと、ロバート。。ロバートなんとかギャラリー。

田辺:あー

野口:ロバート・ミラーだったかな??

田辺:ロバート・ミラー、分かりました。で、最初に余裕が出来て買った写真は何?覚えてます?

野口:最初買ったのは。。なんだっけな、一番最初に買ったのは、ペンかな、ブルース・ウェーバーかな。。

田辺:ブルース・ウェーバー!それはどこで?

野口:ニューヨークで。それは、リオの中の観客だけ撮ってるやつがあるの。

田辺:へえ~

野口:群衆をうわぁ~っていう。

田辺:へえ~それを。。。男と女のみたいなそういうのじゃなくて?

野口:じゃなくて。あと、サーフギャング。

田辺:あ~サーフギャング。

野口:そう、その2枚かな。

田辺:それは当時でも結構高かったの?

野口:いや、まあ、高いよ。

田辺:あ~今だったら大変なことになるね。

野口:ブルース・ウェーバーそんなに高くないもん。

田辺:そうなんだ。でも、まあ、なかなか出回ってないかもしれないですね、どうなんだろう?

野口:どうなんだろう、でもどうしてもやっぱりさ、日本でも前にやったみたいに犬とか、あっち系の方が皆好きでしょ。

田辺:あ~そうだよね、あの、ゴールデン・リトリーバー的な。。

野口:そうそう。本当はねチェット・ベーカーでトランペット持って、寝てるやつで上に手書きで書いてるやつとか欲しかったんだよ。

田辺:あ~いいっすね。

野口:あれはもう、自分の分しかやってないって。

田辺:やってないんだ。結構ブルース・ウェーバーは手書きで写真に色々な文字とか書いた人ですよね。あれもまたセンス良くって。

野口:そうそう。

田辺:その後にアヴェドンとかペンとかっていう大御所的な人を?

野口:そうだね。

田辺:この間、ダイアン・アーバスの話もしましたけど、やっぱりそういう有名な大御所の写真っていうのには惹かれますか?

野口:もう、やっぱり見てたものだからそれはもちろん惹かれるんだけど、でもパリフォトとか行って、なんかドイツ人の無名な人の写真とかも買ったりするけど。

田辺:なるほどね。じゃあ、もう有名無名関わらず?

野口:ジャケ買いみたいなもんだね。

田辺:ジャケ買いね。

野口:そうそう。

田辺:その、写真を買いたい時って「買いたい!」って何かがあるの? こういうのにピンと来たら買うとか。その、ジャケ買いっていうの?

野口:う~ん、でもスティール・ライフが多いかな、あんまり人物ものは買わないかな。

田辺:なるほど。

野口:モデルとかでいわゆるファッションフォトみたいなのは買わないかな。

田辺:へぇ~結構意外な感じ。

野口:あとはウォーホールとかはありだけど。

田辺:あれはでも、存在自体が面白いからね。 誰が一番好きとかってある?

野口:誰が一番好き!?一番はないよね、なんか、それぞれ。

ラリー・クラーク

noguchi tsuyoshi artpiece - LARRY CLARK

田辺:それぞれにいい。 今日のコレクションの逸品として出すラリー・クラークとかはいつ頃から知って?

野口:えーっと、タルサとか見たの何年前だろう?20年は経つよね。

田辺:そうだよね。やっぱりちょっと衝撃的な?

野口:うん。で、まあ、そうやって見てて、こういう人達と死ぬまでに一回仕事してみたいなとかって思う訳じゃない。

田辺:うん、思いますよね。

野口:まあ、願えば叶うみたいなもんで。。

田辺:うん、叶うよね。

野口:そうそうそう。

田辺:俺もあれ見ましたけど、凄い良かった。

野口:なんか、やっぱりどんどん写真家って、今度はじゃあこの人と仕事してみたいとかっていう風に徐々にもっともっとってなるよね。ペンが生きてたら物撮りとかやってもらいたかったな~みたいな!笑

田辺:そうだね~それは贅沢!笑

野口:そうそう!笑 で、じゃあそうやって写真買ったりするとギャラリーの人が紹介してくれて繋げてくれて撮影出来るようになったりとかっていうこともあるし。

田辺:それがキッカケで広がったりするっていうことだね。

野口:そう。

田辺:じゃあ、パリフォトで買った無名なフォトグラファーももしかしたらね? 将来的に繋がるかもしれない。

野口:そうそう。

田辺:じゃあ、仕事と関係性はあるって言ったらある。

野口:そうだね、だからテリーとかもそうだし。

田辺:あ~テリー・リチャードソン! ラリー・クラークさんはどうだったですか?実際に仕事してみて?

野口:いや~大変でしたよ。笑

田辺:大変だった!?

野口:大変ですよ!笑 先生ですから。。やっぱ、商業カメラマンじゃないしね。

田辺:うんうん。

野口:作家でしょ、ある意味。やっぱ好きにさせなきゃいけないっていうか。。

田辺:あんまりあーだこーだいうと。。

野口:ただ、こういうこととこういうものは欲しいってもちろん言うけど。それだけちゃんと伝えておけば、やってくれる、みたいな。

田辺:なるほど!

野口:まあ、日々勉強ですよ!笑

田辺:あ~あはは!笑 でも、そういう人と仕事すると色々と感じる?

野口:感じるでしょ、それぞれ皆違うしね。

田辺:テリー・リチャードソンはまた違う?

野口:テリー・リチャードソンはまた違う。

田辺:なるほどね。

野口:そう。

田辺:写真を実際に写真集じゃなくオリジナルを買ってみて、その~魅力っていうか、結構白黒が多い?カラーも買いますか?

野口:カラーも買ったりはする。買うけど、ああいうペンの昔のやつとかニュートンの昔のとか。。

田辺:何が魅力?

野口:ん?

田辺:写真の魅力っていうか。。

野口:なんだろうな。。酒飲めるよね、これだけで!こう、眺めながら!笑

田辺:なるほどね!笑

野口:そうそう、もう、マスターベーションですね!笑

田辺:ははは!

野口:そう!笑

田辺:でもね~男の時間。。。

野口:独りよがりですから、ただの。笑

田辺:でも、ペンなんか本当に凄い!このなんていうかな、いろんな見え方が出来ちゃう、深いですよね!こんな写真撮れるんだっていう。やっぱり眺めちゃうねこれだけ。酒飲みながら。。

野口:デジタルとはやっぱ違うからね。

田辺:そうだね~。やっぱりじゃあプリントにこだわる?

野口:うん、基本は。

田辺:基本は?

野口:うん、でも、まあ、ファッションに関しては別にデジタルでも良いんじゃないかな。

田辺:でもスティールライフとかはやっぱりプリントの方がきれいですよね。 風景とかは?

野口:風景はね~あ!あるよ、道。ハリー・キャラハン。

田辺:はいはい、ハリー・キャラハン!

野口:道だけ撮ってるんだけど。。

田辺:お~それもサイン本だ!

野口:どこだっけ、あ、これ。

田辺:あ~いいね~

野口:難しいのよ、初版じゃないと!とかさ、色々あるじゃない。

田辺:あ~なるほどね。

野口:ほら、これとか。

田辺:あ~かっこいいっすね~

野口:これとかは買ったりしてる。

田辺:あ~買ったりしてる! 結構じゃあ、もう古いものから新しいものまで。。

野口:デジタルとか高いのが分かんないんだよね、どうなの?って。まあ、時代だからね。。

田辺:でも、試されてないから分かんないっちゃ分かんない、100年もつのかどうかとか?

野口:データあるしさ。。

田辺:うん、データあるし。。

野口:こういうのも欲しいんだよね。。

田辺:いいっすね~~

野口:これプリント、本当に超きれいだと思うよ!

田辺:きれいだろうね、きっと。。 まあ、写真集はやっぱり印刷物なので、やっぱ本物の存在感っていうのは本物しか持ってないものなんですよね、きっと。。

野口:そうだね~

田辺:じゃあ、プリントっていうか、写真の存在感みたいのが好きなのかもしれないね。。本物のもつ。。

野口:うん。まあ、やっぱ次はプリントってなんじゃない?

田辺:なりますよね~ でも、本ももう凄い数だもんね~

野口:これもあるし、家にもあるんだよね~だからこっちに全部移したいんだけど、そしたらまた棚増やさなきゃいけない。。

田辺:床抜けんじゃないかっていう、ここはコンクリートだから大丈夫か。。

野口:ここはまあ大丈夫。

田辺:あの~写真はどこで一番買いますか?海外?

野口:ニューヨークか、パリか、ロンドン。

田辺:じゃあ、それは仕事で行ったときとか?

野口:そうそう。

田辺:買ったりとか。。

野口:で、行く頃になるとギャラリーから営業メールが来るから。。恐ろしいんだよ!

田辺:分かる!でも、それ凄いですよね、ギャラリーの。。

野口:凄いのは、分割でも良いとかって言うからね!笑

田辺:ははは!

野口:そう!おまえそんなに欲しいなら分割でも良いからどうだって!笑

田辺:いや、でもそれが商売ですからね。特に海外のギャラリーは凄いですよね、一回買ったらね。。

野口:だってさ、ものだけ先に送って来てさ、金は後からで良いからとか。。笑

田辺:ははは

野口:本当にいいの?それで?みたいな。笑

田辺:なるほど。うん。分かりました、ではこんな感じで、今日はありがとうございました!

野口:いえ、どうも!

長井朋子 飴色の光と落ち栗色の絨毯

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小山登美夫ギャラリーの作家である長井朋子さんが六本木ヒルズのミュージアムショップに併設されたA/Dギャラリーにて個展を開催した。彼女は人気作家で毎回作品も売れると聞くが、昨年に伊勢丹の2階で展示をした時に普段は絵など売れる事があまりない百貨店の婦人服売り場にも関わらず100万円くらい作品が売れたのでびっくりしたのを覚えている。彼女の作品には子供時代から脈々と彼女の中に生き続けている夢の世界のようなファンタジー溢れるテーマとモチーフが満載だ。縫いぐるみのクマやウサギ、ユニコーンや子馬などと主人公の少女が戯れているような個性溢れる作品は独特の緻密さでしっかりと丹念に描き込まれる。その夢の世界はファンタジーであるがどこか残酷さのような雰囲気も裏側に備えた魅力を持つ。少女が不意に縫いぐるみを投げ捨ててはまた抱き上げるような予想出来ない衝動を感じさせる。また丹念に描き込まれた作品には回りを忘れ一心不乱にただ描く事にだけに没頭する子供のような無垢な情熱も感じる。しかし、ご本人は確実に絵の描き方を心得た大人であるから描き込みにはきちんと計算されたメリハリがある。自分の描きたい世界を客観的にも見ているから描き込みをする時、しない時、意図的に描き込み過ぎてしまいたい時など様々な衝動を程よく制御しながら絵のバランスを崩さないように、しかし、絵が放つ個性的なパワーを最大限に生かすように作品化するのだ。見る側が彼女の描く絵にハマる理由にはこうした高度な表現技術があるのだと思うが観るものはそれには気が付かずにとにかく好きでたまらなくなって買うというところまで自然に持って行かれてしまうのではないだろうかと思う。彼女は今後も様々なテーマで同じ世界をひたすら繰り返し描き続けて行くような気がするが今回はまさに栗色の絨毯の魅力が引き立った作品群でとても素敵だった。次回はどういったテーマで彼女の世界を見せてくれるのかとても楽しみだ。

芦田尚美「ポケットダイビング」

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渋谷ヒカリエにある小山登美夫ギャラリーにて陶芸作家の芦田尚美さんの展覧会を見た。京都在住の作家さんだが展覧会の為にご自身も展覧会場にいらっしゃっていたので少しお話しをしたがとても優しい感じの温和な人柄が伺える方だった。作品の方もその人柄を表すかのように淡く優しい色使いで繊細な陶芸作品だ。彼女の陶磁器は伝統的な技法によって制作されているので普通使いの器としても使い易そうではあるが、なんといっても様々なテーマの元に制作されるアート作品としての陶磁器作品が魅力的である。淡い色はどこか西洋的な印象を受ける色合いでテーマもジーンズや白熊、海外の便箋、海外の食料品のパッケージやチューインガムなど様々である。また、木の葉のような自然のモチーフや、ねじれたような形のさまざまな花瓶もその形と奇抜な色使いが作品群に一層のインパクトを与えている。陶磁器は誰でも毎日使う日用品であるが、同時に作家が作った作品でもあるのだという事実を彼女の展覧会を見て今更ながらに実感した。これらの作品は壁に飾るも良し、置物として愛でるもよし、毎日の食卓や特別な食事会に使うのも良しと様々な楽しみ方が出来るアートと言えるのではないだろうか。