月別アーカイブ: 2016年2月

トレースされた世界「東京尾行」

原美術館にてハラドキュメンツ10「東京尾行」を見た。次代を担う若手作家を紹介するというこの企画展、今回の作家は佐藤雅晴だが彼の作り出す映像作品は文字通り次代を担う新しい表現力を持った作品だと感じた。彼は実写映像をトレースという手法でなぞりながら写し取ることで実写映像とそっくりのアニメーションを作り出す。作品は全てがこのトレースされたアニメーションのものもあれば一部だけがアニメーション化されたのもある。一見するとどこがアニメでどこが実写なのか分からないほど緻密だが、彼はこのイメージを全てペンツールというソフトを使って丹念に、膨大な時間と労力をかけて作るのである。よく見ると実写とアニメの境界は揺れながら絶妙に行き来して見える。今まで見たことのないようなこの作品画面の面白さは実際に見ないと分からない。「トレースとは尾行である」というコンセプトによって完全にアニメ化された世界と実写場面にアニメを混ぜ合わせた世界。そこに展開される様々な東京の風景はどこか異様だが同時に不思議なリアリティーのようなものがあり見ていると少々怖くなってくる。それにしてもなんとも個性的で面白い作品を作る作家で今後の活躍がとても楽しみだ。

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工藤麻紀子展

IMG_8977 IMG_8978 IMG_8976IMG_8975 IMG_8974IMG_8979 2月6日から3月5日まで北参道に移転したTOMIO KOYAMA GALLERYにて工藤麻紀子展が開催されている。 工藤さんの作品はいつもどこか懐かしい子供の頃を追憶するような独特の雰囲気を持っている。 草花や動物と子供、この取り合わせが彼女がいつも一貫して好むモチーフである。 子供はまるで漫画のような姿なのに対して回りに描かれる植物のある風景や動物達は非常に写実的に描き込まれる。 見た感じはなんというか、皆が子供の頃に描いた夏休みの思い出の絵をずっと描き続けて来た大人が描いた絵のようだ。 全体の色彩や子供の姿は淡く切なく感じるけれど、近くで見ると全体的な模写力や表現力は素晴らしく感心する。 透けた感じに描かれる漫画的なタッチの子供と逆に丁寧に描き込まれた植物や動物のいる背景が同じ画面に共存する。 このアンバランスな要素がお互いにうまく作用し合って彼女独特の世界を作り出しているようだ。 好きな世界を丹念に描き通す彼女の作風は記憶の中のイメージが現れ続く限りとめどなく溢れ出てくるのだろう。 今回はメインの壁面いっぱいに広がるかなり大きな作品もあり見応えのある展覧会となっている。