月別アーカイブ: 2017年7月

無意識の姿

神宮前にあるSEZON ART GALLERYにて朝倉優佳の個展「Figure of Unconsciousness」が7月30日まで開催されている。2014年にアートアワードトウキョウ丸の内・シュウウエムラ賞を受賞して以来、ファッションデザイナー「ヨウジヤマモト」のコレクションにアートを提供して参加、今年の初めには東京オペラシティーにて山本耀司と一緒に展覧会も開催した。抽象画というアートとファッションとの出会いは作家にとって大きなインスピレーションになったという。絵が好きで特に抽象画が好きなので以前から気になっていた作家なので今回作品が見れてとても良かった。今回は人物画だというが絵を見ると全てが抽象化されて人の体という原型はとどめていない。しかし、出発点のイメージは人体であったわけで、そこから絵を描き進めながら「肉体という存在」への抽象的で概念的な試行錯誤が始まるのだろう。絵も結構売れていていいことだと思ったし僕も小品ながら1点の絵を買わせていただいた。抽象画は見るものを目で見えるものから見えないものへと誘う魔術のような力を持っていると思う。今後もコレクターの端くれとして朝倉優佳の活動に注目して行きたい。

理想郷

812日まで白金にあるが開催されている。聞けばまだ20代という若手作家だが僕がアートの中でも特に好きなペインティングを表現手法とする若きペインターである。彫刻や立体は自分で作ったことがないので分からないが絵は自分も描くので絵を見る時は特にそのテクニックなどを非常に興味深く見させてもらえるのである。ところで、テクニックの話の前に彼の絵の主題だが、ほとんどの場合は男性の体をテーマとして様々な絵を描いている。立ち小便する男性、裸の男性、酒のラベルの男性、ブルドーザーを操縦する男性などなど、様々なシチュエーションで男性が描かれる。それらを描くテクニックだが、油絵の具とアクリルを一緒に使ったっりして実に面白い質感の作品を作り出す。画面上を垂れ流れるほどの薄い絵の具で描いた上に部分的にかなり厚塗りで量と質感を感じるマチエールの力強い部分もあったりする。そしてそれら全てを統合するのが彼独自の色のセンスだ。以前から色彩のセンスは教えられるものではないと思うと言ってきたが彼にしてもそれは持って生まれた才能だと思う。色が冴えていなければまとまりのない絵になるであろうが実にうまく色の力で画面を引き締めている。若きペーンターの今後が楽しみだ。

Ignore your perspective 37

8月12日まで天王洲アイルのが開催中だ。シリーズ37回目なのだろうけどここまで続けているのは素晴らしいことだ。「Ignore your perspective 」とは「先入観を持たないで」というような意味合いだと思うが毎回異なったテーマを据えて作家たちはそのテーマの作品を発表するという趣向もいいと思う。今回も力作揃いで非常に興味深かったが絵画や立体作品、オブジェと絵を組み合わせた作品など作家たちは独自の表現で作品を発表していた。先日個展を行なった関口正浩も大きなペインティングを2展出していて迫力があったが、前回の個展では作品が完売したそうで嬉しいニュースだった。今回参加している五人の作家は全員が80年代や90年代生まれでとても若いが若手作家の作品が売れるというのは大切なことだと思う。今後もこのグループ展で作家たちが表現を続け作品を売っていくことは日本のアートシーンにとって重要なことだ。

Coyote

Maki Fine Artsにて8月27日まで白川昌生さんの個展「Coyote」が開催されている。プロフィールを見ると白川さんは1948年福岡県に生まれ70年代にフランスとドイツで哲学と美術を学んだそうである。81年にはデュッセルドルフ国立美術大学を卒業、83年に帰国後は群馬県を拠点に作家活動をしているそうだ。近年、日本の前衛美術やモノ派と呼ばれる作家などが世界で注目される中、白川さんのシンプルだが独自の存在感を示す作品は日本の抽象表現として興味深い。今回の作品展の名前でもあるコヨーテに関して作家はこの絶滅危惧種の野生動物の存在に自らの内にある知恵を感じたいのだと述べている。森や林の中、様々な種類の緑色が溢れかえる世界を無限の色の差異を知覚しながら進んでいくコヨーテの活動に習いフィールドを駆け抜けるその知恵を自らも感じたいのだという。とても控えめでシンプルだが美しいバランスで組まれたキャンバスと廃材の絶妙な組み合わせと色の差異を是非コヨーテに想いを馳せながら鑑賞して欲しい作品である。