月別アーカイブ: 2017年8月

見えるの分岐点

9月の16日まで白金にある児玉画廊で4年ぶりとなる中川トラヲの個展「Break Even Point」開催されている。児玉画廊は定期的にテーマ縛りのグループ展を開催していて中川トラヲも参加しているので作品は見てきたが今回は個展とあって彼の作家としての新たな試みを十分に見ることができた。展覧会タイトルは本来は損益分岐点という意味だがここでは作家の「見る」という行為を作品にしてきたコンセプトを表している。つまりそれは「見る」という行為はなんなのかという普遍的な問いである。それは「見る」ことで得るものと失うものが等しくなる地点、見えると見えないの臨界点、または絵画と絵画でないものの分岐点なのかもしれない。今回は今までのベニヤにアクリルで描く抽象画ではなく、額に不規則にマウントの窓をくり抜きそこから絵が見える作品や、モデリングペーストを分厚く重ねた土台に裏に木枠をつけてそのモデリングペースト状にイメージを絵爆など新たな表現方法も披露している。中川トラヲという才能豊かな作家の新作は注目である。

テーマは「平成」

恵比寿にある東京都写真美術館にて9月18日まで展覧会「コミュニケーションと孤独」が開催中だ。TOPコレクションは毎年1つのテーマで東京都写真美術館のコレクションを紹介しているが今年のテーマは「平成」である。メールやインターネットの普及、肖像権の侵害、個人情報保護など「平成」の時代になってから我々の周りを取り囲む環境は著しく変化を続けている。そんな時代背景の中で写真という表現手段も変化を迫られる中で今回は「平成」という時代をテーマに展覧会をキュレーションして展示している。写真という表現は作家と撮られる被写体との関係性の中で生まれるが関係性とは何らかのコミュニケーションだったり関わりということとなる。昔のような単純な関係性だけの時代から現代のあらゆる情報交換の手段が進化し続ける環境になって作家たちは何を撮影し、表現しようとしているのか、そして作家と被写体、作家と鑑賞者の関係性にはどういった変化が起きているのか。情報が錯綜し混沌とすればするほどコミュニケーションのあり方は無限に広がりその中で人は孤独を感じているのではないのか。現代が抱える新たな局面はすでにアート全体に大きな影響を与えていると思うがそんな今だからこそ興味深いテーマだと思う。同館では9月24日まで荒木経惟の展覧会「センチメンタルな旅1971-2017」も開催中なので合わせて是非ご覧いただきたい。

 

飛べ、こぶた

8月26日まで六本木のアートコンプレックスのShugoArtsにて近藤亜樹の展覧会「飛べ、こぶた」が開催中だ。激しい勢いを感じる絵画作品は力強く内服されたエネルギーの爆発のようなパワーを感じる。聞けば30歳とまだ若い作家は内面に蓄積した様々な記憶や想い、感情などが限界に達した時に大量の作品を一気に描きまくるのだという。一見めちゃくちゃのようでいて絵が決して崩れることなく安定した力を放つというのはそう簡単なことではない。絵の基礎というか、絵画力がないとなかなか想いのままに自由にしかしめちゃくちゃに崩れることなく絵として成立する絵を描くことはできないと思う。感情の全てをそのまま画面に吐き出すような描き方は無邪気な子供の絵によくみられるが大人として画家としてそれをやれるには技術よりも才能が必要だと感じる。そういう意味でこの若手作家の作品は凄いし更に今後の制作活動も楽しみだ。