月別アーカイブ: 2018年2月

奈良美智の30年

今世紀に入ってから活躍する日本人アーティストの村上隆と奈良美智、今や二人はアーティストとしてアジアはもちろん世界中で不動の人気を得ている。その村上隆が自身が運営するカイカイキキギャラリーでこのほど奈良美智をレプレゼントすることになったという。ともに躍進してきた同士として表現は異なるにせよ作家としての精神性を共有していると感じる二人の作家がこういう形で繋がるというのはアート界にとってニュースである。カイカイキキギャラリーでは3月8日まで最初のギャラリー企画展として奈良美智の過去30年に渡るドローイング展を開催している。カイカイキキギャラリーでは今年度もう1回奈良美智の企画展を開催するほか香港アートバーゼルでも特設ブースで奈良美智の作品を展示するという。アートに関心がある人はもちろんだが関心がそんなにない人も奈良美智の作品を好きという人は多いと思う。その証拠にカイカイキキギャラリーは平日の昼間にもかかわらず大勢の人で異常に賑わっていた。奈良美智にとってドローイングとは一体どういう行為なのかという原点を振り返る展示は圧巻でギャラリー内には年代ごとにグループ分けされた様々なドローイングが壁面やテーブルの上に展示されている。奈良美智の表現の源であるドローイングを年代を追って見ることはその作品の魅力の謎を紐解く鍵であるような気がする。子供の頃から鉛筆1本で描くことが好きで鉛筆1本でなんでも描けていたきがすると語る奈良美智だが自分の中から湧き上がる思いや感情をストレートに描き出すという行為で作品を作ってきたその稀有な才能を存分に感じることができた。村上隆と奈良美智の今後の新たな展開もますます楽しみだ。

天才?会田誠展

2018年2月10日から24日までの2週間、期間限定開催で北青山にある青山クリスタルビルのB1とB2を会場に会田誠展「GROUND NO PLAN 」が開催中だ。会田誠といえば2012年に森美術館で「天才でごめんなさい」という回顧展を開催した奇才アーティストである。好き嫌いは別にして日本の現代アートの一端を担ってきたこの作家は予測不能な発想と表現でいつも驚きを提供してくれる人である。今回の展覧会はアートの発展に力をいれる公益財団法人大林財団の助成プログラム「都市のビジョンーObayashi Foundation Research Program」によって開催されることとなった。2年に1度の頻度で5人の推薦選考委員の推薦によって選ばれたアーティストが都市をテーマに作品制作と発表をするという企画なのだそうだが記念すべきその企画展の第一回のアーティストに選出されたのが会田誠なのだ。会田誠と都市とはなかなか結びつかないような感じだがそこにこそ狙いがあったようで展覧会は相変わらずのハチャメチャな表現で面白い状況になっている。地下2階のフロアーは吹き抜け部分もあるが壁から吹き抜けまで会田誠ワールドが炸裂していてこの稀に見る異質な才能のアーティストは相変わらずパワー全開である。ゲストにChim↑Pomや山口晃も招き「やりたい放題」な展示インスタレーションを展開している。壁に貼られたビニールシートや紙切れに殴り書きされた会田誠の論理展開など読んでも面白いのでゆっくりと読み進むのもオススメだ。黒板に書かれた詳細とリアルなジオラマ模型で提案された新宿御苑大改造計画が特に圧巻だった。2週間の期間限定なので興味のある方は是非見に行って欲しい。

「ポートレイツ」展

MAHO KUBOTA GALLERYにてグループ展「ポートレイツ」が2月28日まで開催されている。昔のヨーロッパ貴族が描かせたいわゆる肖像画や日本なら浮世絵の美人画、近年ならスマホの自撮りも「ポートレイツ」といえばそうなるのだろう。歴史的にも絵画の主要テーマの一つだし現代になっても多くのアーティストが様々な表現でアプローチするのが「ポートレイツ」なのだ。「ポートレイツ」への出展作家はミニマムな線や形で人を表現するジュリアン・オピ、ガーリーフォトグラファーの先駆者的な写真家の長島有里枝、女性の体のパーツを絵に描く小笠原美環、女性の顔をアイコニックに描くグラフィックアーティストのKYNE、絵画の持つボリュームや質感を精密な模写で再表現する武田鉄平、都会のフリータの若者を油で描く富田直樹、現代の若者の触感を持つ彫刻や絵で表現する安井鷹之助の7人だが、今回最も驚いたのは武田鉄平の絵画作品であった。荒い筆のタッチで分厚い絵の具で描きなぐったような絵は実はその真逆で精密に模写された精密画だったのだ。様々な形で表現される「ポートレイツ」は非常に興味深い。