月別アーカイブ: 2018年3月

スターリング・ルビー

六本木にあるタカ・イシイギャラリーにて4月21日までスターリング・ルビーの展覧会「VERT」が開催されている。スターリング・ルビーはLAを拠点に活動する作家でタカ・イシイギャラリーでは今回が3回目の個展となるそうだ。最新作のペインティングでは赤やオレンジ、黄色、セルリアンブルー、緑、茶などの大胆な配色が黒などの背景と組み合わさり大胆で力強い画面を構成する。厚塗りの絵の具にボールかみや布帯などで画面をグラフィカルに切り取った作品には無骨ながらどこか詩的な感情を呼び覚まされるようだが作品タイトルには「cross、十字」「window、窓」「vert、垂直」などの含みのある言葉が用いられている。特に「窓」は作家が繰り返し表現してきたテーマであり見るものにとって窓の視点は外から見たものか内側からか明確ではない。不確かな未来の姿を予見しながら内側と外側を行き来する心象風景は絵画の中に無限の広がりを与えるようでもある。

池田衆の個展「Sight」

六本木ヒルズのアートショップに併設するADギャラリーにて4月8日まで池田衆の個展「Sight」が開催中だ。池田衆は写真を切り抜くカッティングアウト技法を駆使して独特なイメージを作り上げる。今回は新作も加わって大作もあり見応えのある展覧会となっている。池田衆は自ら撮影した風景などの写真をプリントしてそのイメージを部分的に切り抜いたり貼り付けたりなどして写真を変幻させる。もともとあった写真イメージをヒントにしてはいるが変幻の度合いは作品によって様々で全く違ったイメージに変化させる時もある。写真という正確に被写体を捉えたイメージを元にしながらも全く違った美しい世界を完成させるという面白い表現を試みているのだ。

 

枯れない花

天王洲アイルの寺田アートコンプレックスにあるYuka Tsuruno Galleryにて炭田紗綾季の絵画展「枯れない花」が開催中だ。絵の表面が塗り重なられた絵の具と油のツヤで輝くようなストレートな油彩画である。約2年ぶりの展覧会だそうで今回はじめて見させていただいた作家だがしっかりした手法と画面の構図の面白さなど絵には力があると感じた。これまで日本の文化やファッション広告、記念写真、観光地のポスター、神話など様々なモチーフを画面上で再構築して絵画に仕上げ異質なイメージを作り上げてきたそうである。作家が「文化のオリジナル」という考え方に問いかけるとともに80年代に育った作家自身も様々な文化の混じり合った日本の文化で育った。今回は災害などの平穏な日常が脅かされるような災いが起こるはずがないと誰もが思っている「平和ボケ」の中で生まれる現実との距離感を作品化したのだという。

透き通るような色彩

4月14日まで天王洲アイルにある児玉画廊にて糸川ゆりえの絵画展「アルカディア」が開催されている。透き通るような色彩を使って光の絵画ともいうべき絵画世界を作り上げるこの作家さんは以前から注目していた。独特な色の使い方や夢の世界のような画面の雰囲気が印象的な作品だがラメを混ぜ合わせた絵の具を使うことで画面が揺らめくような不思議な雰囲気を全体的に醸し出している。日頃からから書き留めている手記や夢の記憶などを反芻した時にふっと浮かぶ情景や人物をモチーフにして作り上げられる非日常的な世界観がこの作家の絵の魅力でもある。夢と現実の狭間にするっと迷い込んだような不思議な世界に輪郭の定かでない女性像が揺らめきながら現れるのだ。独自の絵画世界を貫く糸川ゆりえの絵画は見るたびみ新たなインスピレーションをくれるし今後も大いに期待したい作家さんだと思う。