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本木雅弘「素朴なアートのパワー、日常がアートな話。」
my art collection 第3回 / 全3回 / 2013.11.15

本木雅弘「素朴なアートのパワー、日常がアートな話。」

ONE SIZE GALLERYディレクターである田辺良太が友人の「アートコレクション拝見!」に伺い、アートに関して気楽に語り合うという連載コーナー「my art collection」。第2回目に訪ねた友人は本木雅弘さん。10年振りに子供が出来て今は家族とロンドン暮らしの本木さんが来日中にお邪魔しました。今回は長い対談になったので全3回に分けてお送りいたします!

フォークアートの魅力

本木あ、今メキシコって言って思い出した、メキシコも一緒に行きましたよね。NYから

田辺あ~行った行った、

本木それで、メキシコシティーでフォークアートを沢山買って、骸骨ものとか奇妙でカラフルなものザクザク。

田辺面白かったね~

本木でも、あれも未だに時々街の雑貨屋さんで見かけるけど可愛いですよね!

田辺可愛い可愛い!

本木やっぱフォークアートの魅力って、行く地方地方であるじゃないですか、あれも面白いですよね。

田辺あるある、素朴なパワーがあるんだよ。
たぶんそれは原始的な無垢なパワーだろうね。

本木昔、グランドキャニオンに行った時に、ナバホインディアン?あ、今はインディアンって言っちゃいけないのか。

田辺そうだね、ネイティブアメリカン。

本木そう、その人達が暮らし続けてる立ち入り禁止の居住区っていうのがあって、そのエリアの回りにちょこちょこっとお土産並べて売ってたりするんだけど、そこで出会った、人間が動物のマスク被った木彫りの人形にどうしてもこう、なんか惹かれて買っちゃいました。

田辺でもさ、それはたぶんトウォブリーと通じるところあると思うよ、あのアフリカの呪術の木彫り人形とかネイティブアメリカンだったり、イヌイットとか、なんて言うんだろうね通じるパワーみたいな。

本木あ、たぶんそれは自然発生的なというか、人間の根源的な祈りみたいなものが込められているから同じ人間としてなにか感じる、、。

田辺だから一方で凄くソフィスティケートされた知的なインテレクチァルなレベルの凄い高い人達のアートがあるけど、どちらかっていうと俺なんかは人間が感じるのはそういった素朴なものとか、なにかこう純粋さみたいなもの、なんかそういう事が感じられる事、そういうのをアートに求めるのかもしれない。だから、例えばアンリー・ルソーっていうペインターね、あのジャングルの絵とか。

本木あーあの幻想的な。

田辺そうそう、あの人なんか俺は凄い好きなんだけど、ピカソなんかも彼の絵を集めていたらしい。 彼なんかさ、本当にジャングル一回も行った事ないのに全部想像で描いてて。
なんか、彼の筆さばきっていうか、彼は自分では凄く絵がうまいって言ってるわけ、俺は天才だって。
だけど、凄くへたっくそなんだけど、うまへただね、そこの具合が凄く好きで。

本木は、はあー

田辺そういうのってあるよね、で、たまたま日本にも似たようなのがあったりアフリカの木彫り人形の感覚に似てたりと。 なんかこう、クロスオーバーして?感性が似てる物がそこに発見出来たりする面白さ。
昔の人なんかさ、ヨーロッパだったらヨーロッパのアートしか知らないじゃん、その中で見てる訳じゃん。
今は世界中の物を俺らは見てて、ここのこれとあそこのこれがなんとなく同じところに引っかかるとか感じられるってのは面白い事かもしれない。

本木確かにそうですよね~

現場主義

田辺それは幸せか幸せじゃないかは別として。

本木でも、やっぱりその、今、旅が凄く楽になっちゃったのと同じように、まあ、仕事もそうだけども、最終的には現場主義でいたいみたいなところがあるじゃないですか。何事も、ある先入観とか、戦略があって、自分なりの物を抱えていくけれど、やっぱり現場に立った時にそれが使える物かどうかとか、そこで改めて感じられるものっていうの?だからやっぱりアートも写真もネットなんかで見ていた平面上の物じゃなくて実際に見た時にどれほどのエネルギーなり刺激を感じるか、交感できるかっていうのがやっぱりあって、そこを楽しみたいですよね、旅の風景もそうだし。

田辺本物だよね、やっぱり。
俺はトゥオンブリーの絵とか感動したし、もちろん好きな作家だから。
ピカソなんかもアヴィニオンの娘たちとか最初に見た時に凄く感動したし、ゲルニカも感動したし、でも一番感動したのはルーベンスの絵なんだよ。

本木はぁ、ルーベンス!

田辺フランダースの犬でさ、最後死ぬじゃん絵の前で、あの時にバックにさキリストが十字架から下げられる場面の絵があるのね、それって宗教画では凄く人気のシーンでいろんな人が描いてるんだけど、ルーベンスのそれっていうのが凄い。
確かベルギーのなんだっけ?

本木ブリュッセルじゃなくて?

田辺違う違う。

本木アントワープ?

田辺そう!アントワープ!
アントワープ美術館にあるのかな、で、それがニューヨークに貸し出されて来てたの。
それだけの名作だから凄い人気で、すっごい大きいんだけどさ、その絵はね、後光が射してた!本当に。

本木へえ~、でもなんだか分かる。

田辺もうなんかね、あれはなんなんだろう、たぶんその絵の前で何百年もの間いろんな人が祈りを捧げてたからか分かんないけど。 なんか、滲み出てくるようなものがあるわけ。
宗教画って沢山見てるけどあの絵は凄かったな。
だからそういう体験って本物のアートに触れるとあるよね、あと仏像とかもそうじゃん。
そういうのって貴重な体験だから、今の若い人はネットだ何だで先に見ちゃうから知った気になっちゃうけど、その、現場?が大切な気がする。

本木あ~いいな~ 最近、そういう決して朽ちないであろうものに出会えてない気がする。

田辺もし行くならアントワープにあると思うよ。
それは本当にお勧め、なんというか、思わず拝みたくなっちゃう感じ。

本木う~ん、そのうち出会いにいきます。

自分の生活全てがアート

田辺話は戻っちゃうんだけど、さっきロンドンにはいろんなところにアートが飾ってあるみたいな話だったけど、あと外国とかだと絵を飾るじゃない。
自分が好きな物、例えば子供の絵でもいいし有名な作家の絵でもいいし、何でも良いんだけど、日々なにか感じるために自分の生活のために飾るっていうのも大事ですよね?

本木そうですよね、やっぱり、平面な壁にたとえばハエ一匹いただけで意味が出てくる?(笑)えっと、それだけでも奥行きが出てくる?(笑)というように。でも、現実的には今の家は借り物なので壁掛けは無理、で、子供が描いたただの絵を立てかけてます、ようするにこれパパの顔?的な、歪んだ丸と小石がくっついただけの顔に枝のような手、とか、あれこれ。
でも、やっぱり、これは右利きの自分が左手であえて描いてもこの味は出せないみたいな魅力はある。

田辺通じる所ある感じ?

本木そうそう。しかも幼児は日々、進歩する、、
そういうものを感じたりするから、ま、今の生活ではそれで十分。

田辺あーそれはいいことだ。

本木かつ、また、やっぱり日常で起きてる出来事が、本当になんというか、単純ですけど、、思春期入り口の娘の手前に、素っ裸の3歳児がいて、時々185センチを越えたバスケ少年(長男)がウロウロ、、それだけで、なんか分かんないけど生活そのものがシュール。 例えば、娘が家でリラックスして、大股開き的にソファに座っているのをテーブル越しに見て=バルテュスみたいなね。(笑)
そういうのが日常のシーンの中にあるし、葉っぱだけだった枇杷がむくむくと育って実をつけていく様を窓からのフレームで見ていれば、あ、もうこの風景だけで静物画いらないよとかね。

田辺たぶんさ、昔アートを色々とどん欲に見た時ってそれが必要だったんだよ、でも今はさ子供とか生活とか、でも、同じだと思う。
日常のことが自分がアートに求めていたのと同じようなことをそこから得ている、だからそれは自分を豊かにしてくれる物だってことだから。

本木たぶんきっと、これは、物を作りたいって人間じゃなくても、ごく当たり前に生活を送っている誰しもが、ある瞬間、ちょっと寄り道したいとか、ここから逸脱したいとか、深く別の世界に行きたいとか、そういう感性の欲望らしきもの?が潜在的にあると思う。
だからきっと永遠にアートは消えないと思うし、アートの力によって群衆や世界が動くってことがあると思う。ちょっと大げさだけど。

田辺そうだよね、個人を動かせる訳だからね。

本木なんかその辺は信じたいし、信じたいって言ってる自分が好き?(笑)
それこそ、全てがコンセプチャル?毎日がアートです、みたいな。
だからウォーホールがただパシャパシャパシャって日々のスナップを撮っていたのも、今でこそ、それが十分過ぎる表現になってる。

田辺ウォーホールは究極のコンセプチャルアーティストであり、センスのいい人?だからそれを色々な形で残した人だよね。
だから、まあ、自分の生活の回り全てがアートですかね、そういう眼で見れば。

本木ホントにそうですね、いや~この先また自分が、どの方向に行くか、ちょっと今は離れているけども、また何らかの形でアートにぐぐっと接触する機会が増えれば、また違う好みも発見出来るかもしれないというのは楽しみです。

田辺なるほど!
今日は長々とありがとうございました、楽しい話が沢山聞けました。

本木いえいえ、こちらこそ、久しぶりに新鮮でした。

本木雅弘さんインタビューは全3回です。

本木雅弘(第1回)「ロンドンでの家族との暮らしコクトーの話。」

本木雅弘(第2回)「ニューヨークの思い出やコンセプチャルアートの話。」

本木雅弘(第3回)「素朴なアートのパワー、日常がアートな話。」

本木雅弘
本木雅弘

1965年埼玉県生まれ。89年「226」で日本アカデミー賞新人俳優賞。 「シコふんじゃった。」(92)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞など多数受賞。 企画から携わった「おくりびと」(08)でも、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞他、多数受賞。 「おくりびと」は、第32回モントリオール世界映画祭グランプリ受賞を皮切りに、第81回米国アカデミー賞外国語映画賞部門を受賞するなど、国内外で数々の映画賞を受賞。CM界でも独自の存在感を放ち、名実ともに活躍する実力派俳優。 3年に渡り放送されたNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」で主演を務め、第38回放送文化基金賞 演技賞を受賞。