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渡辺いく子(第二回)欧米人とは異なる日本人独特の気質や文化などについての話。
my art collection 第2回 / 全3回 / 2015.08.04

渡辺いく子(第二回)欧米人とは異なる日本人独特の気質や文化などについての話。

ONE SIZE GALLERYディレクター,田辺良太が友人の「アートコレクション拝見!」をしながら気楽に語り合うという連載コーナー「my art collection」。第8回目の友人はスタイリストで最近は本も出版している渡辺いく子さん。アーティスト池田衆のコレクターであるいく子さんにカルチャーの話や日本人の性格の話、池田衆のコレクションの話などを聞きます。

良い意味で偏る

田辺:好きなものは誰が何と言おうと突き進むみたいな事をおっしゃってましたけど。

渡辺:はい!

田辺:今回お出しになった本にも日本人の性格というか、そういうのが随所に書いてあったんですけど、例えば欧米と、まあ、単純に欧米との違いと言っちゃうのもなんですけど、自分で判断するとか、ブランドに走っちゃうとか、いく子さんはまず、自分に何が似合うのか?好きか?

渡辺:そう、好きか!

田辺:そう、それを考えずに人がいいっていうものに走るみたいな話がありましたよね。

渡辺:そう、流行ってるからそれを着なきゃいけないんじゃないかとか、それは洋服でも美術でもそうですけど、今これが来てるからこれを着なきゃみたいな、でも、お洒落からいったらそれはもう終ってるんですよね。過去なんですよね。

田辺:なるほど!

渡辺:で、勘で行ったものはさっき言ったみたいに誰がけなそうが誰が認めまいが自分が好きだったら良い。だって、海外のコレクターの映画あったじゃないですか!あのおじいさんとおばあさんの!あれもそうじゃないですか!全然売れてないゴミみたいな現代美術をああいう人達が買い支えるから良いんじゃないですか、洋服だって流行ってるものばかり買ってたら詰まんないじゃないですか。

田辺:そうですよね。

渡辺:音楽でも何でもそうなんですけど。でも、分かんない人は別にそれでも良いと思うんですね。ただ、お洒落を自覚する人とか嫌な言い方ですけど、まあ、グローバルで言ったらそういう姿じゃないんじゃないかなって。私は高校の時からギャルソン着てたんですけど、そんなのもう本当におかしい人ですよ。ギャルソンとビビアンを着てる。1970年代の高校生、文化学院にそういうので行ってたんですけど、おかしいですよ、その後に50sに狂ってLA古着にハマっちゃったんですけど、それは当時の流れと違ったんですけど今来てるじゃないですか。

田辺:来てますね!

渡辺:なので、ファッションにしても美術にしてもやっぱり好きなもの?だってもし流行ってるからって買ったらそれが流行らなくなったら嫌い?っていうか、それに自分の価値はない訳じゃないですか。

田辺:自分で気に入っているっていう。

渡辺:そう、気に入ってるっていう軸があれば良いじゃないですか。

田辺:いつまでたっても良いですけどね、人の評価ではなく。

渡辺:人の評価ばっかり気にしてたら。。まあ、それはそれでそういう生き方もあるかも知れないですけど、ちょっと私は。まあ、良い意味で偏ってるってことが良いと思ってて、偏ってる事はいけないって教育を受けがちじゃないですか、でも、偏って良いと思いませんか?例えばビュッフェに行ってもトマトが好きならトマトだけ取って来ても良いし。海外の人のビュッフェってそうじゃないですか、同じ物ばかり取って、でも、日本って端から順番に取っていくじゃないですか、だから混むんだと思うんです。あんなのトマトならトマトのとこだけいけば混まないんですよ。

田辺:確かに!

池田衆のコレクション

池田衆のコレクション (渡辺いくこ)

渡辺:でしょ!だから美術も、私は池田衆さんの作品が好きだし、そしたらやっぱりコレクションっていうか、好きな作品があったらそれを買いたいし。。で、なんか知らないけど集まっちゃた。

田辺:でも、それが最終的には一番の幸せ?

渡辺:うん、幸せですよ、でも実際家には掛けれる白い壁面が一面しかないので掛変えなきゃいけないんです、で、トランクルームに入っててちょうど今掛け変えようかなと思って。

田辺:それはシーズンの変わり目とか?

渡辺:というか、気持ちで。

田辺:あーなるほど。

渡辺:はい。全部は掛けられないので。

田辺:そうですよね。

渡辺:で、居間を片付けるともう一面できるから、そこにも掛けようかなと。

田辺:でも、日本の床の間文化とかね。

渡辺:あ、そうです!そうです!掛け軸!そうですよ!

田辺:なんか、季節でね。

渡辺:季節で!そうそう!掛け軸的な絵の掛け方ですね、私は。

田辺:良いですね!
でも、日本のマンションだと釘打っちゃいけないだとか。。。

渡辺:打っちゃいました!笑

田辺:ははは!

渡辺:あ、でも、今は色んなのがあるじゃないですか!

田辺:あ、跡が残らないやつとか?

渡辺:そう、跡が残らないやつとか、強力な接着剤とか。。だからちょっと工夫出来ると思いますよ。家の父が実は美術が好きで、養清堂画廊っていうのが銀座にあったんですけど、そこの美術印刷を実家がやっていたんですね、だから小さい頃から画廊に出入りしてて、小さい頃から無理矢理に現代美術を見せられていたんですね。あと、父が展覧会が好きで色々連れて行かれたんですよ。訳も分かんない頃から。だからブランドで見るっていうよりは父の好きなものを見せられていたのでその中で自分が好きなものはやっぱり良いなって思う訓練が出来てたのかもしれないですね。

田辺:よく言われるのが日本の美術は鑑賞教育じゃないみたいな。

渡辺:うん、本当にそうですよね、歴史とかっていうよりも鑑賞して、興味を持ったらそれについて調べて行けば良い訳じゃないですか。

田辺:よく海外の美術館に行くと子供がね。

渡辺:そう!だからあれとか負けた!って思いません?

田辺:ははは

渡辺:だから、例えばね、美術だけじゃなくて、私アナスイとか前にインタビューした事あるんですけど、彼女とかはやはり小さい頃から色んなものを見てるから今のショーとかに反映される訳じゃないですか。やっぱり、それが色なのか形なのか、よくいるじゃないですか、床に座って先生の話聞いてるみたいな、それもこれどう思う?みたいな感想じゃないですか、鑑賞と感想ですよね。でも、日本だとこれは何年に描かれた絵で誰々の弟子でみたいな、そんなの超どうでも良いって感じですよね!ほら、あの、ブルースリーが言ってたDon’t think feelってやつ。あれですよね。

田辺:確かに!

渡辺:でも、それは美術もファッションもそうだと思って、自分が凄く良いと思えばそれに対して熱心になって例えばお金を使う?それがアーティストとかデザイナーを支える事でもあるし。流されているんではない。そうそう、美術教育そこ違いますよね。鑑賞教育ですよね。

田辺:鑑賞教育が基本。

渡辺:あの子供達、私最初に見た時にやられたと思いましたよ。

田辺:そうですよね。だから日本ももっとそうなってくれれば良いと思うけどやっぱり点数う付けたがるっていうか、皆一律で。。。

渡辺:もう、あとは個々ですね、親ですね。

田辺:そうですね。

渡辺:小さい頃から連れて行かれたら、それで分かんない人は分かんないで良いじゃないですか、その人はもっと他に音楽とかに感ずるものがあるかもしれないし。

田辺:そうですよね。

渡辺:はい。

田辺:なんか先週香港のバーゼルっていうのに行って。

渡辺:あ、はいはいバーゼルやってましたね。

田辺:始めてだったんですけど、やはり中国の人が多くて、もうなんか作品と記念写真!みたいなノリだったんですけど、それはそれでうざったいんですけど、でもなんかのびのびと普通にやってるみたいな、日本だと腫れ物に触るみたいになっちゃうけどああいう親近感っていうか、自由さが良いなって、日本人は遠慮しちゃう。

渡辺:だって、LAの現代美術のコレクターなんて殆どそうじゃないですか、家の壁の色に合うわとか、凄い大きいのとか買って、でも、それで良いんじゃないですか、そうやって買い支える人がいるからアーティストも次が作れるし。

田辺:日本だとアート界ってお金が回ってない。

渡辺:あー回ってないですよ!

田辺:そうすると若い才能ある作家とかも評価が低くて。

渡辺:そう、継続しづらいですよね。

田辺:だからアートでお金を稼ぐってことが、アーティストにとってはそれが仕事な訳だからお金が儲かればより良い環境でもっと作品が作れるとか相乗効果があるじゃないですか、そういうのがね、まあ村上さんみたいに海外に出てければね。

渡辺:そう!出てければね、奈良さんとかね、出て行っちゃえば良いけどね。

田辺:でも、大部分のアーティストって出て行けない性格というか。。

渡辺:出て行けないよね。それってファッションもそうですよね、若い人で面白い人がいたら買って買い支えるってことですよね。

田辺:買い支えるね。

渡辺:よく、あ、このブランド好きだったのに潰れちゃったって言って一枚も買ってない人いるじゃないですか!笑

田辺:ははは、買えよ!と。

渡辺:買えよ!ですよ。それは町の定食屋もそうじゃないですか!あ、締めちゃった!みたいな。でもこの頃行ってなかったなあ~。。だから潰れたんだよ!みたいな。
アートもファッションも定食屋もまったく一緒じゃないですか。

田辺:確かに!なんか、本の中に高級なバッグ持って地下鉄乗ってる女性の話があって面白かったんですけど。。。

渡辺:でも、あれは武装だからね。。

田辺:あーそうですよね。

渡辺:そう、盾だし、武器だからね。。。あ!でも、日本のアートの買い方ってそうじゃないですか、私ウォーホル持ってるのよ!とか、さっきのマチスで、マチス持ってるのよとか、武装じゃないですか!ウォーホルある素敵なお家みたいな!笑

田辺:そういう人もいますね。

渡辺:いますよね!

田辺:それはそれで良いと思うんですよ。

渡辺:まあ、お金出してるから良いんですけど。

田辺:ただ、日本だと家に行くって習慣が海外ほどないから自慢出来ないから持って歩けるバッグの方が手っ取り早い。

渡辺:そうですね!すぐに見せられるもんね。それはあるかもしれませんね。

田辺:伊勢丹でアート展示する仕事してるんですけど、ファッションの売り場で、でも、売れた事ないんですよ。ファッションを買いに来る場だからか1万円以上とかだとまず売れないんです。

渡辺:でも、3万くらいだったら買いますよね、普通は。

田辺:買わないですよ、でもアーティストは作品売れる以外に収入源ない訳だから作品が売れなきゃ他に行ってしまうしかない?商業デザインとか?

渡辺:でもウォーホルとかも最初は商業だったじゃないですか、それでアートに行った。でも、それって面白くてファッションもそうで、例えばラルフ・ローレンなんかね、最初はネクタイ売り場だったんですよね。幅広いネクタイでラルフ・ローレンは当てたし、あと、アルマーニもミラノの百貨店「ラ・リナシェンテ」のバイヤーとかだったんですよね。だから行く人は、誰かが認めれば、こいつ面白いじゃないかとかいってネクタイ一本からでも行くんですよね、シャネルだって帽子屋さんじゃないですか!

田辺:確かにね!

渡辺:そう、だから最初はそうかもしれないけど、その後行けるかどうかで、でも、日本は行けるのかっていう。。。。

田辺:そうですよね。。

渡辺:はい。

田辺:でもね、世界の経済水準的に第3位か何位か分かんないですけど、高いのに文化はね。。。

渡辺:文化に対するなんだっけ、GDP?は低いですよね。。
私も現代美術に関しては素人じゃないですか、まあ、美術手帖はずっと読んでますけど。。。ある意味、ファッションに対しても素人なんですよ、私は。

田辺:あ~でもそれは良い事ですね。

渡辺:はい。いわゆるブランド好きではない。。ブランドは好きですけど皆のようなミーハー好きではないし、私オタクなんで、さっきみたいに、聞かれればなんでも、歴史とかでもなんでも紐付けて語れますけど、今の日本のファッションってそんな事は誰も求めてなくて、私と同じ事をもしも英語で外人が言ったら凄いお金になると思うんですけど、世界中で!?でも私はまあ、素人で良いのかなと。ファションも美術も。素人なりの意見?結局は本も素人目線で書いたから今回もお陰さまで売れている?なんですね。

田辺:分かり易いですよね。
でも、クロウトにはしたくない。

渡辺:なんとなくクリスタルにしようと思えばいくらでも出来ますけどね、固有名詞をバンバン出してね。でも、それはクロウトや身内受けで終ってしまうので、美術なんかに関しても同じかな。

田辺:今日話されたようにまず本当に自分の好きなものを知るというか見つけるみたいな話ですね。

渡辺:うん、ただ、それが全ての人に出来るかっていったら。。海外の人って割と小さい時から好きか嫌いかって言う訓練をされてるじゃないですか。だから、例えばね、レストランとかでオーダーするのでも肉の焼き方からサイドはポテトにするのかどうかまでもう決まってるじゃないですか、で、あの人達コーヒーしか飲まない人達はコーヒーしか一生飲まないんですけど、日本人って迷うじゃないですか。あれはなんで迷うのか私は分からない。だけど、そういう気質なんですよ、きっと。小さい時から。うちはもうすぐに決めないと置いて行かれたりもらえなかったりしたので、だったらもう面倒くさいからずっとコーラで良いですみたいな、私はじゃあ紅茶ですみたいに決めさせられたんですけど、毎回毎回、たとえば飛行機でもそうでしょ?お飲物何にします?って考えるってあり得ないじゃないですか!

田辺:分かってることですよね。

渡辺:そう!あ、だったら水とコーヒー!とかってすぐに注文しますよね。でも、それを迷うのがファッションもアートも日本人気質だと思うんですよ。決めるっていう訓練が出来てない。だから外国とか行くと長い列になっちゃうし、もどかしいって思われちゃう。何が好きか分からないって。

田辺:そこが奥ゆかしさとか美徳なのか分からないですけど。。遠慮するとか。

渡辺:あとね、チョイスが今は多過ぎる!江戸時代なんかそんなチョイスがなかったから、そんなに選べなかった。だってあたし達の小さい頃だって毎日同じもの食べてましたよね!だから今私それに戻ろうかと思って。ファッションもそうなんですよ。それで良いじゃないですか。別に、好きなものをずっと食べてれば良いじゃないですか。偏ったって、偏ってますよ、どうせ、みたいな。

田辺:そうですね、迷ったまま色々持つよりもまずは捨てなさいと。

渡辺:そうなんですよ!だから、今まででついちゃった迷いの部分は持っている必要はないっていうことですね。

田辺:なるほど、分かりました!じゃあ絵の説明を最後に。

渡辺:あ、はい!

渡辺いく子さん第1回はこちら

渡辺いく子さん第3回はこちら

第3回に続きます!

渡辺いく子 (Ikuko Watanabe)
渡辺いく子 (Ikuko Watanabe)

ファッション誌で30年以上のキャリアを誇るスタイリスト。“大人の女性”の服選びの第一人者として、数多くの女優のスタイリングも手がける。美しいビジュアル感覚はもちろん、的確な理論に基づいた着やせテクニックなど、実用性の高いスタイリング術に定評がある。